会長からのメッセージ (過去) 



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ご 挨 拶

全国大学附属農場協議会
会長 西脇 亜也
(2019年4月4日)


 H29年度から会長職を拝命した宮崎大学の西脇です。H14年度の農場協議会年報における塩谷会長の「農場の存在意義を高く掲げて危機に臨もう」と題した退任のご挨拶を読み、書かれている内容は今の農場が置かれている状況を正しく予見されていると感じました。
 塩谷会長は、「農業の技術と農の精神の鍛練の場として農場実習は欠くべからざるものであった」と述べ、大学設置基準によって農場の無い農学部はなく、そのお陰で、大学農場は“温存"されてきたし、「“農場あっての農学部"と言うことも出来る」と大学附属農場固有の“存在意義”を示されています。さらに、「世界的な食糧危機の克服、自然環境の修復・保全、人々の健康と癒し等の担い手として、農業・農学に強い期待が寄せられており、また、従来の要素還元的な近代科学の方法の行き詰まりを打開する方法論として総合的なフィールド科学の方法が提唱され、農場・演習林がその研究の場として注目されていることを見過ごしてはならない。農場にはすばらしい可能性がある。」と、新たな“存在意義”の重要性を主張されています。
 一方、「農学栄えて農業亡ぶJ との農学草創期の嘆きは、「さらに時を経て、今や、大学農学部の教育から、農業(者)教育の色はほとんど消えてしまったかのようである。農学部の中でも、農場実習の無いカリキュラムを組んでいる学科がある」とし、「今後は大学の農学教育にとって“無くても良い"存在に転落し、農場が土地・金・人の草刈り場にされてしまいはしないかと案じられる」と強い“危機”感を述べておられます。さらに、「独立行政法人」化(H14年度の頃は大学法人ではなく独立行政法人の計画でした)は「設置基準」の支えを外すことになるのではないかとの新たな“危機”感も表明されています。
 一方、施設・設備の老朽化、予算減少、人員削減などの問題は、当時も“危機”でしたが、現在では、国立大学法人化した国立大学だけでなく多くの大学附属農場において本当に大きな“危機”となっています。また、大学附属農場は、地域との共同研究や地域貢献の場として、そして他大学の非農学系学生の実習の場所として活用される機会が増えることにより、職員の多忙化の激化と言う新たな“危機”が顕在化しています。
 この“危機”に臨むにはどうすれば良いのでしょうか?議員さんや文科省など関係各所からは、「農業法人化」や「定期借地契約」などの助言を受けています。大学附属農場の存在意義を評価していただいたこれらの助言はとてもありがたいのですが、これらによって先の様々な問題が解決できるでしょうか。難しい農場も多いでしょう。やはり、個々の農場の特性を最大限に活かす方向をしっかり自らの手で実践することが重要だと思います。そのためには、どうすれば良いのでしょうか。これは本当に難題ですが、皆さんと共に考えたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。